りこ…
キミは本当に頑張ったね…
偉かったよ…
全身をウイルスに蝕まれても、パパやママに最後まで愛嬌を振りまいてくれたね。
キミが星になる日の夜も、パパとママに可愛い声を聴かせてくれたね。
今思うと、あれは精一杯のキミのお別れの挨拶だったような気がしてならないんだ…
キミは分かってたんじゃないかな…
あの日の夜、遠くへ行っちゃうことを…
「りこぉ〜」って、いつもより寂しそうな、甘えた声で…
人間なんて、大した事ないよね…
科学や医学の進歩なんて、笑っちゃうよね…
世界中に、この病気で苦しみ亡くなっている、罪の全くない、天使のような鳥たちが沢山いるのに…
日に日に弱っていくキミを目の当たりにしながら、何も出来ないなんて…
あの晩、パパは久し振りにキミを手の上に乗せて、愕然としました。
あまりに軽すぎる…と…
でも、まさかその夜に…
ご飯も毎日必死に食べて、うんちも正常なのに、最近のキミはどんどん痩せ衰えていったね。
昼間は殆ど、背中に顔を埋めて眠っていたね。
暖房はしてたけど、寒そうにして…
もう少しで、春が来て暖かくなったのに…
キミは本当に本当にいい子だった…
優しくて、大人しくて、明るくて…
憶えてるかな?
キミに出逢ったあの日…
お店には同じコバタンが、たしか四羽いたよね。
裏に回ってかごを開けて貰った時、キミが真っ先にパパの方に近づいてきて、すぐに手に乗ってくれたよね。
他の子達は、逃げたり、威嚇したり…
そして、パパの手に乗って、キミはパパとママを大きなまん丸の目でじっと見つめたよね。
『優しくしてくれるの?』
『連れてってくれるの?』
『わたしもこの人たちのとこなら行ってもいいよ』
キミは絶対にそう思ってくれたんだよね。
パパはキミの頭を撫でながら、その瞬間にキミを連れて帰る決心をしたんだよ。
憶えてるかな?
キミを迎えた次の年の最初の春、公園に散歩に行ったね。
見るもの聞くもの、みんなキミにとっては初めてで…
パパの肩に乗って、両足で必死にしがみついてたね。
痛いくらいに…
でも、きょろきょろして、楽しそうだったね。
そしてみんな、キミを見て驚いたり、微笑んだり…
公園一の人気者だったね。
憶えてるかな?
うちの近くの鳥繋がりでネットで知り合った方のお家に一緒に遊びに行ったよね。
そこには、色々な鳥さんがいて…
キミは、おっとりとパパやママやお友達の肩の上で大人しくしていて、鳴き声一つあげなかったね。
しまいには、お友達の肩の上で眠りだしちゃって…
みんな、ビックリしてたんだよ。
なんて大人しくて穏やかな子なんだろうって…
憶えてるかな?
色々な場所にも一緒に行ったよね。
あの時はもう病気も大夫進行して、羽も少なくなってたけど、でも一生懸命明るくしてくれたよね。
パパの音楽関係のお友達と、軽井沢の別荘に行った時、車の中でお友達の手に乗ったり、「りこちゃん!」って答えてくれたり…
みんな、キミのお陰で、とても楽しくて幸せな気分になれたんだよ。
憶えてるかな?
いつかパパとママがヨーロッパに旅行に行った時、前にみんなで会った、近くのお友達のお家にキミを預けたよね。
一週間くらいだったかな?
キミが心配で、心配で…
成田からキミを迎えに行った時、忘れられていたらどうしよう…って思ってたんだ。
車に乗ってかごから出してあげたら、大急ぎでパパの肩に乗ってすぐに「りこちゃ〜ん!」って言ってくれたよね。
嬉しかったよ…
キミがくれたもの…
パパとママは一生忘れない…
キミが燃やした命の灯火は、パパたちを明るく照らしてくれました。
キミの病気は免疫が無くなって、羽は抜け落ちて、大切な内臓まで障害を与えて…
辛くて、痛くて、苦しかったことと思います。
でも、最後まで本当に頑張ったよね。
本当なら、きっとパパよりも長生きできたのに…
もっともっと生きていたかったよね…
パパもおじいちゃんになっても、キミと一緒にいたかったよ…
キミが発病してから、このことを誰にも言えずにいました。
怖かったし、認めたくなかった…
キミが寿命よりもずっと短い将来にいなくなっちゃうなんて…
だから、可哀想な姿のキミの写真は撮れなかった…
そんな姿のキミを知らない人に見せたくなかったから、公園にもあの日から連れて行かなかった…
ごめんね… ごめんね…
意気地なしだよね…
キミはキミで変わっちゃった訳じゃないのに…
でもね、りこ…
最後の最後まで、少なくてもパパとママは、キミのこと、可愛いと思ってたよ。
羽が無くても…
嘴が変形して、下の嘴の方が長くなっても…
口の横に腫瘍が出来ても…
足の付け根が、ケロイド状に炎症をおこしても…
キミは、あのまん丸の瞳で、パパとママを見つめて、「りぃこぉ〜」って話してくれたよね。
本当に可愛かった…
心の底から愛してました。
そして、あの日キミを家族に迎えたこと、全然後悔なんかしていません。
キミがキミで良かった…
本当にそう思ってるよ…
今はきっと、羽も嘴も元に戻って、大空を飛んでいるよね。
もう、痛くも苦しくもないよね。
キミが大好きだったナッツンナゲットもいっぱいあるよね。
寒くないよね。 淋しくないよね。
パパもママもキミのそばに行くからね。
キミに絶対に会いに行くから…
だから、だから…
短い一生だったけど、キミには長くて苦しい闘病生活だったことと思います。
ありがとう… りこ…
そして、本当にお疲れさま…
また、きっと、きっと会おうね…
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